プリンセスの条件
そのままベッドに倒れこみたかったのに、翔太はキスを途中で止めて、焦らすように言う。
「このプレゼント、今のマイは受け取った方がいいと思うけど」
「いい。もっとキスして」
「マイの夢が本当の意味で叶うものでも?」
「え……?」
あたしの、夢?
もう夢は叶ったような気がしていたけれど、翔太が言う“あたしの夢”の意味が分からなくて、思わず箱のリボンに手をかけた。
箱を開けると、想像もしていなかったプレゼントが入っていて。
息をするのも瞬きをするのも全部忘れた。
それを翔太は丁寧に箱から取り出し、あたしの薬指にゆっくり通す。
「コレが今のオレの精一杯。小さいとか文句言うなよ?」
クスクスと笑いながら、ハートの形をしたピンクダイヤモンドの指輪が完全にあたしの指に収まった時、そっと壊れ物に触れるようにあたしの薬指にキスをした翔太。
あたしは夢を見ているようにフワフワした気分で、どこか遠くでその光景を見ていたような気がする。
だけど。
「マイ」
甘く優しく名前を呼ばれてハッとして、止まっていた涙が次々と溢れだした。
そんなあたしの頬に流れる涙を、翔太は両手で拭って、今までで一番男らしい顔で、真剣な声で、ハッキリと言ったんだ。
「鈴川真愛さん。オレと、結婚してください」
何度も夢見た大好きな人からのプロポーズなのに、視界がぼやけて見えなくて。
最高にカッコイイ翔太の姿を、この目に焼き付けることができなかった。
「は…い…」
震える声で答えたのを合図に、もう一度キスをして、ベッドに身体を沈めた。