ホタル


いつもと変わらない優しい笑顔。

その位置が、前より随分高くなった気がした。


「......裕太、背伸びたね」


ふいに口をついて出た言葉に、裕太は軽く目を丸くした。

一瞬変なことを言ったかと焦ったが、裕太の照れた様な笑顔があたしを安心させる。


「もうすぐで朱音追い越すよ」


そう言うとあたしの手からタオルを受け取り、キッチンのテーブルに向かった。

そんな裕太の背を見ながら、あたしは冷静さを装って食器棚に手を伸ばす。

「コーヒー飲む?」
「うん。砂糖、いいや」


カタンと椅子を引き、裕太はいつも自分の座る席に腰かけた。


片膝をたてて座る、いつもの癖。

あたしはコーヒーを用意するのに真剣な風を装いながら、そっとそんな裕太を見つめていた。



学ラン姿の裕太。

まだ見慣れないけど、でも十分すぎるくらいに似合ってる。



ここ最近一気に背が伸びて、雰囲気も少しだけ大人っぽくなった。

そこいらの中学生に比べれば、頭ひとつ分は確実に大きいと思う。

昔から大人びた子ではあったけど、最近は本当に大人びてきた気がする。

ついこの間まで小学生だったなんて、全然信じられなかった。

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