ホタル
「朱音は?高校どうなの?」
今度は裕太が聞いてきた。
「うん、まぁまぁかな。英里もいるし。ただ......」
「ただ?」
頬杖をつき、軽くため息をつく。
「制服だけが気に入らない。似合わないんだもん」
ここ最近あたしの中で一番『ありえない』と感じている事を口に出した。
きょとんとした顔を向けながら、裕太は「そう?」と聞く。
「そうだよ!こんなにあたしのショートとブレザーの相性が悪いなんて思わなかったしっ」
頬を膨らましながら愚痴を言うあたしを見て、裕太はふっと笑った。
あたしはいぶかしげな表情を向ける。
「何で笑うの~?」
「や......言われてみればって思って」
「ひどいーっ!」
あたしはガタンと立ち上がり、裕太は「悪い悪い」と笑いながら謝った。
もちろん本気で怒ってなんかない。
今まで裕太に対して、本気で怒ったことなんかなかった。
喧嘩すらしたことないのだ。
あたしたちは、近所でも有名な程仲の良い姉弟なのだ。
姉弟なのだ。