ホタル
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さっき電話があって、今日は両親共々仕事で帰れないらしい。
まさみさんが残念そうに残りの夕飯を片していた。
部屋の時計を見ると針が丁度10時を指す所だった。
髪を拭いていたタオルを机の上に置き、軽いため息をつく。
......煙草、吸いたいな。
普段部屋では吸わない様にしているが、今日はなんだかそんな気分だった。
いつもは引き出しにしまってある灰皿を久しぶりに取り出した。
以前年末にお父さんの仕事に付き合い家族でアメリカに行った時、こっそり買ったお気に入りの品だ。
少しだけ懐かしく思いながら灰皿を眺めていると、ふいにノック音が部屋に響いた。
ドクンと心臓がはね、瞬間的に引き出しにしまう。
「はい?」
ガタガタッという音とあたしの声が部屋に同時に響いた後、ドアの向こうから返事が返ってきた。
「おれ」
違う意味で、心臓がはねる。
「......裕太?」
驚いた声で名前を呼ぶと、ガチャリとドアが開きお風呂上がりの裕太が顔を出した。
火照った頬が妙にあたしの緊張を煽る。
「ちょっと頼みあって」
後ろ手でドアを閉めながら裕太はゆっくりとそう言った。