ホタル

「あははっ」
「げほっ......何、煙いじゃん」
「初めはそんなもんだよ。すぐ慣れる」

落ち着いた裕太はふぅっと息を整え、煙草を灰皿に押し付けた。

「どう？」
「どうって？」
「初めての煙草の感想」

二本の煙草の吸殻からは、微かにまだ煙が出ている。やがてそれは細い線となり、消えた。

「......大人の味」
「大人の味かぁ」
「また一歩近付けたかな」
「大人に？」

その質問には答えずに、裕太は小さく微笑んで再び煙草を一本取り出した。
慣れた手付きで火をつける。

今度は咳き込むこともなく、慎重に煙を吸っていた。

豆電球の下で方膝を立てゆっくりと煙草を吸う裕太は、あたしから見ても十分逸脱した雰囲気がある。

あたしも再び煙草に手を伸ばし、一本取り出してくわえた。
ジッポを手に取ろうとしたが、「ねぇ」という裕太の声に遮られる。