ホタル



……………

外は雨が降っていた。窓際に腰かけたまま、しとしとと落ちる雨をただ見つめる。

モノクロの世界が続いていた。その中で考えることは、ただひとつ、あの日のことだけ。


あの日。裕太と、思わぬ再会をしてしまった日。


あれから一度も音沙汰はなかった。

携帯の番号もアドレスも三年前から一度も変えていなかったけど、裕太からの連絡はない。
あたしから連絡することはできたけど、それをするのは躊躇われた。


降り続く雨。

何処にもやれない不安が、湿気と共にあたしを侵食していく。


目を閉じた瞬間、静寂の中に携帯が鳴り響いた。

咄嗟に目を開けて、急いで携帯に手を伸ばす。

「もしもし?」

無意識に、確認もせずに取っていた。

もしかしたらという期待が、どうしても拭えない。


「あ…お嬢様、ですか?」


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