ホタル



……………

どれくらい駆け回っただろう。雨脚が強くならないのだけが幸いだった。

辺りは大分暗くなってきている。デニムの裾が濡れていた。

もうあまり意味の為していない傘の下で、小さくため息をつく。


…裕太。どこにいるの?


不意に視線をずらした。
側にあったのは小さな公園。



瞬間、息が止まりそうになる。



公園のブランコ。

いつかのあたしの様な座り方。

俯いたまま微動だにしていないのは、紛れもなく裕太だった。


「…裕太」


ゆっくりと、足を向ける。

パシャッと鳴る水音にすら、裕太は顔をあげなかった。

側に行き、そっと傘を差し出す。

あたしの身体に痛くない雨が降り注いだ。


まだ顔をあげない裕太の前に、あたしはそっと膝をつく。

目線が、裕太と同じになった。

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