ホタル


静かな夜に落とされたその言葉は、確実にあたし達の三年間を溶かしていった。

何度も何度も圧し殺した感情。それらはまるで、生きていたかの様に簡単に胸の内へと戻ってくる。

感情が、想いが、愛しさが。定位置へ戻っていき、あの押さえきれない息苦しさを呼び戻す。


最初に泣いたのは、あたしだった。


「…裕太」


きつく裕太を抱き締める。何かを堪えるかの様に、裕太もきつく抱き締め返した。


「泣いていいから。ここなら泣けるでしょ?…好きなだけ、泣きなさい」


…声を出さずに、裕太は泣いた。

裕太のこの涙を、あたしはどれだけ見ていなかっただろう。

裕太の涙があたしの胸に染みる度、固く閉じたあたしの瞼から同じ涙が溢れる。

そうやってあたし達は、泣いてきたのだ。



夜は静かに流れた。


その穏やかな流れが、裕太の心に優しく響いて欲しい。


裕太に抱かれながら、あたしはただ、それだけを祈った。





< 275 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop