ホタル


「言ったでしょ?鈴川君とはそういう関係じゃないって」
「でもあの人は、朱音のことが好きだよ」

裕太が断言することじゃないのに、裕太はきっぱりと言った。

あたしは視線を落とす。

鈴川君には、何度か告白されていた。でもあたしは応えるつもりはなかったし、彼もそれをよくわかってる。

どうにもならないことだって、わかってる。

耳に、川の流れが聞こえた。


「…あたしが好きなのは、裕太だから」


どうして今までこれが難しかったんだろう。

素直に、自分の気持ちと向き合えば、すぐにわかったこと。

素直になって、何がいけないの。



二人の間に川に乗ってきた風が流れた。

裕太はあたしに、そっと口付けた。

それは、一瞬で永遠の幸せ。



「…溶けちゃった」
「あーあ」

二人の手に伝う溶けたソフトクリームが、なんだか無性に愛しかった。


愛しくて、痛かった。










< 284 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop