ホタル


「ていうか英里、煙草やめたんじゃなかったの」
「やめたつもりだったよ?ただ雅が吸うからさ。人の前でうまそーに」

恨めしそうにふんっと煙を吐き出す英里に、あたしは呆れた返事を返す。

「なんだそれ。雅人さん、帰ってきたの?」
「2月半ばにね。多分そろそろ向こう戻るんじゃない?」
「何をあっさり......」
「仕方ないでしょ。レポート残ってるみたいだし」
「じゃなくて」

あたしは英里の隣に腰掛け、煙草を灰皿に潰す。

「まだ付き合ってないの?」
「ないよ」

あまりにもあっさり吐き捨てる英里は、冷めているのか意志が強いのか。

「だってどう足掻いても遠恋でしょ?あたし遠恋なんて絶対無理」
「でも今からうちらも大学生だよ?英里だって関西だし、今より近くなるじゃん」
「行ってみなきゃわかんないでしょ、距離なんて。向こう行って、堪えられる距離だったら付き合うかも」
「かもって......」

「わかーんないっ」と立ち上がり、英里はさっきのあたしと同じ様な格好になった。
フェンスに腕をかけてガシャガシャと揺する。


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