ホタル


光と闇が反発しあって、裕太の表情が読めなかった。
裕太から見たあたしの表情も、きっとよく見えなかったと思う。

でもそれでよかった。



「それ以外に、何か理由がある?」



裕太は言った。いつもと同じ優しい声だった。優しいからこそ、残酷な声。


......あたしは裕太に何を求めていたのだろう。


あたしの腕を掴んだ力強い手。

深見さんを一瞥した静かな視線。

桜並木の下繋いだ暖かい掌。

夜の闇に溶け込んだ優しい笑顔。


自惚れた。現実から目を反らした。"もしかしたら"なんて有り得ない期待を抱いた。


『それ以外に何か理由がある?』


あるわけがない。そんな理由、存在しちゃいけない。あたしは裕太の『お姉ちゃん』。それ以上でもそれ以下でもないのだ。

それが現実。いい加減思い知れ。


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