ホタル




……………

「あの次の日だったよね。朱音があたしに打ち明けてくれたの」

ゆっくりと空を泳ぐ雲があたし達の上を通りすぎた。雲の隙間から射し込む光がまるで屋上に絵を描く様に移動する。
隣に座る英里は、もう煙草を吸っていなかった。

「......驚いた?」

前だけを向いて呟くあたしに、英里は何も言わない。多分あの曖昧な笑みを浮かべていると思う。

「でも、なんとなく、そうなのかなって思ってた。ううん、はっきりとはわかってなかったと思うけど......だから驚いたっていうより、あぁ、そうなんだって感じだったかな」

英里に打ち明けた日は今でも鮮明に覚えている。英里は何も言わずに、そっと抱き締めてくれた。彼の前で泣くことが赦されないあたしは、初めて思い切り泣いた。

「でも、嬉しかった」

あたしの呟きに英里が顔を向けた。

「英里、否定しないでくれたでしょ?絶対に理解なんてできないのに、理解しようとしてくれた。そういう英里に、あたしはずっと救われてきたよ」

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