ホタル
否定されることが何よりも辛い。あたしの全てを否定されることと同じだから。だけど英里は絶対にそんなことしなかった。いつもあたしの味方だった。
「感謝してる。ありがとね」
小さく微笑んで呟いた。英里も茶化すことなく、綺麗な瞳を細める。
ゆっくりと空を横切っていた雲は、グラウンドの方へと歩みを進めていった。遮られるものがなくなった光は、屋上いっぱいに降り注ぐ。2人空を見上げて、眩しさに目を細めた。
「そろそろ行こっか」
英里は立ち上がり、煙草の匂いを消すためなのか香水を軽く吹き掛ける。香りの粒子を潜る様にしながら階段へ続くドアへ向かった。あたしもそれに続く。
「桑ちゃん式サボったこと怒ってるかな?」
「いや、案外わかってたかもよ?あたしらが真面目に式に出るわけないって」
「あははっ、そっか。じゃあお詫びに、超感動的な手紙でも渡す?」
「桑ちゃん泣いちゃうかもねっ」