ホタル
……………
「え、平岡君に!?」
棚の上のお菓子を取りかけていた英里は、あたしの報告に思わずバランスを崩しそうになっていた。寸でのところで踏みとどまり、棚の上からいつものお菓子を取り出す。
本来甘党のあたしはいつも英里が出すハバネロがどうも苦手なのだが、この部屋の主が英里である以上文句は言えない。
部屋の真ん中にあるミニテーブルに英里お気に入りのハバネロを投げ置いてから、英里はあたしの顔を見ながら目の前に座った。
「え…平岡君って、平岡浩司だよね?」
「知ってるの?」
「大介と仲いいから顔と名前くらいは…」
英里と大介は小学校からの腐れ縁で、世間一般でいう幼なじみだ。二人を見ていると、男女の友情はあるんだということを実感する。
「で、何て答えたの?」
早くもハバネロに手を出しながら英里は聞いてきた。あたしが知る限り英里の部屋には常にお菓子(特に激辛系)があり、来る度に新調されている。これだけ食べて、何でちっとも太らないのだろう。
「今すぐ返事はいいって言われたから、何も言わなかった」
ハバネロを口に運ぶ英里を見ながら、さっきの質問に答えた。少し驚いた表情で英里が言う。