ホタル
あたしはドアからひょこっと顔をだし、まさに今英里にこき使われようとしている男の子を見た。
「修平君?久しぶりだね」
英里の弟、修平君を最後に見たのはいつだっただろう。まだ修平君がランドセルを背負っていた頃だった気がする。
あの頃から英里にこき使われていた修平君は、もうすっかり大きくなっていた。
「え…朱音さん?」
「あはは、朱音"さん"だって!あたしに虐められる度に『朱音ちゃん~』って朱音に泣きついてたのはどこのどいつだったかなぁ?」
「ば…っ、うるっせーよっ!!んな昔のこと忘れたっつの!!」
外見は大人っぽくなったけど、相変わらず英里には敵わないらしい。顔を真っ赤にして英里に掴みかかろうとするが、逆に返り討ちにあう彼を、微笑ましく眺めていた。