ホタル
両親は、成績さえよければ何も文句は言わなかった。
それが両親の、あたしを計るものさしだったから。
どんな格好をしようが、どれだけ遊んでいようが、成績表を渡せばあの甘い賞賛が降り注ぐ。
そんな『あたし』に、あたしは心底失望した。
どこかであたしは、彼等を失望させたかったのかもしれない。
あなた達の娘は、そんなにできた子じゃないのよ。
完璧なあたしなんて、結局幻影でしかない。
偽物の賞賛なんかじゃ、あたしは『できた娘』にはならないわ。
でもあたしは、彼等の期待を裏切ることはできなかった。
こうやって小さな反抗をすることしかできない。
彼等には、痛くも痒くもない反抗。
バレたって、たいした痛手じゃないだろう。
「......バカみたい」
煙の中で、浮かぶ様な呟きをする。
本当にバカみたい。
結局あたしは、彼等にとっては『できた娘』なのだ。
......でもあたしは、それを裏切る一番の切り札を持ってる。
心に秘めた切り札。
一番の裏切り。
決して表に出してはいけない、切り札を。