ホタル


「ごめん、話の腰折っちゃったね。で…」
「仲良いよね、英里と修平君」

英里の話を遮り呟いた。その言葉の意図がわかったのか、英里は黙ってあたしを見つめる。

「…理想の姉弟って感じ」
「まぁ…あたしがこき使ってるからあいつはどう思ってるかは知らないけどね」
「でも何だかんだ言って、修平君英里のこと信頼してると思うよ。そういう空気が、二人の間にはある。…家族の絆っていうのかな」

それはとても尊いもので、切ってもきれないものだと思う。同じ血が体内を巡っている奇跡。産まれる前の居場所を共有した奇跡。


…だからあたしの想いは忌まわしいのだ。その絆を、否定したくてたまらないものだから。


「…何だかんだ言って、あたし修平のことアイシテルんだよね」

唐突な英里の言葉に顔を上げた。

「3つとか中途半端な年の差だからさ、昔はウザくて仕方なかった…あいつ昔病弱だったから、母親取られたみたいな気がしてね。でも…『姉ちゃん』ってあたしの後ろひょこひょこ付いてくるあいつは、やっぱ可愛くてさ。あれだけこき使ってても、やっぱ好きで、大切な弟なんだ」

ははっと苦笑する英里。あたしも小さく微笑んだ。


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