【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
いつもよりもかなり声が低い翔は絶対に機嫌が悪いハズ。
私はただ何も言えなくて、翔と杏里ちゃんを交互に見ているだけだった。
「ほら杏里、お前は向こうでお兄さんとお話ししような〜」
状況を見ていた涼が、杏里ちゃんの肩を掴んで、奥のテーブル席へと案内する。
「え〜涼さんとぉ?」
なんて言った杏里ちゃんは、そのゆるい話し方とは裏腹に、私を睨んでいた………様に感じる。
「はぁ…」
『…翔?』
深いため息を吐いた翔は、珍しく頭を掻き乱して、席を立つ。
「仁菜、帰るぞ」
『えっ?あ…うん…』
そのまま手を引かれる様に、店内を出た私は、そんな私達を杏里ちゃんが睨みつける様に見ていたなんて、知らなかった。