【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
翔の車に乗り込み、まず香ったシトラスに安心する自分がいる。
「悪いな」
『え?』
「嫌な気分になったんじゃねぇか?」
『…』
翔は運転席から腕を伸ばし、私の頭を撫でる。
嫌な気分というか…杏里ちゃんが翔の事を好きなんだなって事は、あの短時間でヒシヒシと伝わった。
同じ月9の共演者の杏里ちゃん。
共演して、私が翔を好きになったみたいに、彼女も翔に魅了されたに違いない。
そりゃもちろんベタベタと翔に触れる杏里ちゃんに、嫌だと思ったのは事実なわけだけど、人を好きになるのに理屈なんてなくて
彼女の感情を私がどうこう出来るわけなんてない事くらい理解している。
『私以外好きにならないでね?』
少し不安に揺れる瞳を翔に向ければ、「ならねーよ」と笑った翔に口を塞がれた。