【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「帰るか」
『うん』
しばらく抱きしめ合っていた身体を離した翔の言葉でマンションへと帰った。
雨はまだ降り止むことを知らずに、夜の街を濡らしている。
フロントガラスに落ちた水滴が、車や街灯に照らされてキラキラして見えていた。
「泉は我が儘なんだ」
『…』
「最初現場でも、我が儘炸裂さしてて…まぁちょっと叱ったら……懐かれた」
お風呂に入ってベッドに寝転んだ翔は、天井を見ながら呟く。
乾いた笑みを漏らしたその横顔を眺めながら、ちょっと叱ったと言葉を濁した翔は多分キツい事を言ったんだと思う。
仕事に真面目な彼だから。
『ねぇ、翔?』
「ん?」
『せっかく2人っきりなのに、他の女の子の話なんてしたら嫌』
少し拗ねた表情を見せた私に「ごめん」言ってぎゅうっと抱きしめてくれる。
シトラスの香る冷房の効いた部屋で、素肌の温もりを感じる。
私はもう翔に溺れっぱなしで。
私と翔の息遣いが響いていた。
『しょ…うっ、好きっ』
何度目かの絶頂でそう呟く私の手をぎゅっと握った翔。
今更この手を離されたら、きっと私は息も出来なくなるんだろう…