【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「…」
『…』
「…」
『……ねぇ』
しばらく沈黙が続いた車内で、言葉を発したのは私。
榎本さんは一瞬だけチラリとこちらを向いて、タバコに火を点けながら「なんだ」言う。
『…泉杏里って知ってる…?』
別に何気なく聞いた事だった。
芸能人なわけだから、もちろん顔と名前くらいは知っていた。
翔の事が好きっぽい杏里ちゃん。
彼女が気にならないと言えば嘘になる。
だから榎本さんに聞いてみた。
「あ?泉杏里?」
だけど榎本さんは途端に低い声をだして、それに少しビクついてしまったのは、あの最初の頃を思い出したから。
それに気付いたらしい榎本さんは「悪い」と言って、灰皿にタバコを押し付けた。