ハルジオン。
「ソラ?」

耳ざとくアキトが聞き返す。

「ソラって……空?」

「そう。その空だ」

呆気に取られているアキトを横目に、達也は掴まっている木の枝葉を折り、それを空に投げ捨てた。

当たり前のように、枝葉は綺麗な放物線を描いて森の闇に消えた。

「何してんの?……ねえ?」

黙ったまま森の闇と紺色の夜空を見つめていた達也は、もう一度枝葉を折り、「浮け」と念じて放り投げた。

すると今度は落下せず、二人の目の前でフワリと浮いた。

「!……浮いた?!」

それを見た達也は、「なるほど」と頷き顔をほころばせた。

< 183 / 339 >

この作品をシェア

pagetop