ハルジオン。
「だいたいお前には勇気がねえ。いいか、捨てられたくないなら、母ちゃんを返せって言えばいいんだ」

「そんな……」

「殴られたっていーじゃねーか。俺なんて何度オヤジに殴られたか。それをこんな所でウジウジしやがってよ!」

「黙れよ!」

大きな瞳に涙を一杯に溜め、アキトが唇を振るわせた。

「何も知らないくせに!」

ドン、と鳩尾を殴りつける。

「お前なんかに何が分か……」

「分かるんだよ」

アキトの言葉に声をかぶせ、達也はニコリと微笑んでみせた。

< 186 / 339 >

この作品をシェア

pagetop