ハルジオン。
達也は無言で首を振った。

「どうして?ね、帰ろ」

「あっち行けって」

「ダメよ」

そう言ってじっと顔を覗き込んでくる百合子の瞳に、自分の姿が映っていた。

みすぼらしい。

まるで本物のもぐらみたいだ。

達也は百合子の瞳から視線を逸らし、振り切るように河川敷の土手を走りだした。

「あ、待って!」

「ついて来んな!」

叫んでいた。

この時初めて、達也は父のことを恨いと思った。

悔しくて、悲しくて、辛くて、腹立たしくて涙が溢れた。

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