ハルジオン。
「もぐら、あっち行けよ」

それが達也についたあだ名だった。

学校の図鑑でもぐらの絵と説明を見つけて、まったくそのとおりだと達也は思った。

土の中で暮らす生き物。
暗い。
大きな爪を持った危険な手。

まるで自分を一言で言い表されてしまったようで怖かった。

いつも一人だった。

引っ越したって、結局何一つ変わらなかった。

友達などできるはずもなく、一人で学校に通い、誰とも遊ばずに一日をやり過ごし、一人で家に帰った。

今日は誰からも声を掛けられなかった。

それだけで安心した。


「いっしょに帰ろ」

転入から数日経ったある日の帰り道、一人下校の列から離れて歩く達也に声をかけた少女がいた。

それが、百合子だった。

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