ハルジオン。
八坂神社の境内には、秋の収穫祭で使う山車(だし)をしまっておくための倉庫がある。

靖之はその倉庫のすぐ脇にある、踏み台ほどの小さな岩の前で立ち止まった。

「あ、これこれ!」

途端に百合子が懐かしそうに胸の前で手を合わせる。

「思い出した?」

靖之がニコリと微笑んだ。

「うん。確かこの下に埋めたのよね」

「良く覚えてるな」

「たっちゃんはこれだもんな。そういやあの時だって全然乗り気じゃなかったしね」

やれやれという顔で肩をすくめ、靖之がショベルを倉庫の壁に立て掛ける。

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