ハルジオン。
達也は忌々しげにその薄汚れた白壁の倉庫から目を逸らした。まさか、よりにもよってこの場所に来ることになるなどとは思いもしていなかった。

ため息ばかりが口をつく。

どうしようもなく、最悪な気分だった。

「せいの!」

掛け声と同時に、屈みこんだ靖之が岩を持ち上げる。

「頑張って!」

その隣りで楽しげに振る舞っている百合子の横顔は、もう「あの時」のことなど忘れてしまったかのようだ。

どうして平気でいられる?

今にも声を荒げそうになる気持ちを懸命に抑え込む。

もっと早くカプセルを埋めた場所がここだと思い出していれば、絶対に靖之の誘いなど乗らなかった。

つくづく自分の考えのなさに腹が立つ。

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