ハルジオン。
くじ、綿菓子、リンゴ飴。

少ないながら何軒かの露店も神社に続く道の両脇に軒を連ねた。

達也はこの町が好きではなかったが、収穫祭だけは別だった。

三人は高校生になっていた。

若者の人手が少ない町だったこともあり、その日は達也も借り出され、華やかな山車を押して町を何度か往復した。

靖之もいた。

チャンチキチ、と鐘が鳴る。

心地よい小太鼓の音が、刈り取られた稲穂の空に広がっていく。

一仕事終えた後、達也は靖之と別れた。

炊き出しの匂いに食欲をそそられながら帰り道を歩く途中、忘れ物に気がついた。

それが、すべての始まりだった。

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