ハルジオン。
「もう少しよ!」

と手を叩きながら、それとなく達也を見ていた百合子は、達也のその態度に目を伏せた。

分っていたことだった。

それでも胸はズキリと痛んだ。

カプセルを埋めた場所がどこなのか。そこで何があったのか。

忘れるはずがない。

ましてや、平気な顔でいられるわけなどなかった。

***

あの日、町は秋の収穫祭に賑わっていた。

祭には山車が出る。

山車の上は四畳ほどの広さがあって、そこに五六人の子供を乗せ、笛や鐘や太鼓をならして町を練り歩くのだ。

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