ハルジオン。
不思議な感覚だった。

そこに行ったからと言って、何かがあるわけでもない。

『蛍の森』の話が脳裏をよぎる。

もちろん、それを目指してこの森に足を踏み入れたわけではない。

そんな暇があるなら、東京に戻って昼寝でもした方がマシだ。

達也の目的は別にあった。

愛染窟は三岳山の三合目ほどにある。

最後にもう一度、そこから一望できる町の景色を眺めたくなった。

ただ、それだけのことだ。

< 77 / 339 >

この作品をシェア

pagetop