ハルジオン。
山道に入ってゆうに一時間近く歩いたかと思われた時、達也の目の前に小さな洞穴が姿を現した。

「……あった」

達也はよろめく足で枯葉に覆われた山道を登り切ると、そのまま両膝をついて座り込んでしまった。

山道は更に続いていて、山頂まで登るにはあと数時間はかかるはずだ。

その中腹、いや、むしろ麓と言っていい程度の森の中に、洞穴はあった。

特別な感傷も湧かない。

ただただ疲れた。

よくもまあ、気軽に遊びに来ていたものだと感心する。

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