剣と日輪
 公威に未来が開けた。難所(なんしょ)しかない悪路が。
(ゴールには永久(とわ)の安息が待っているのみ)
 今者(きんしゃ)の彷徨(ほうこう)に比すれば、命懸(いのちが)けの茨(いばら)道(みち)である。流離(さすらい)の気安さはもう無い。
(我武者羅にやるだけさ)
 猪突(ちょとつ)猛進(もうしん)の気(き)根(こん)のみが、公威の支柱(しちゅう)となろう。
 九月二日木曜日、公威は大月高人事課長に辞職願を出した。大月は、
「君のような才能に恵まれた人は、いいねえ」
 と羨(うらや)まし気に受理(じゅり)した。
「私なんか、他にいくところがないからなあ」
 九月二十二日、公威は依願退職し、役所勤めを九ヶ月足らずで、完結させたのであった。
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