剣と日輪
 公威は、寂歴(せきれき)となった。
「御母さんの言う事だけは聞くんだぞ」
 威一郎は返事をしなかった。
 帰宅した公威は、居間で長椅子に深く腰掛け、御茶を入れてくれた倭文重に、
「お母様、威一郎は段々手に負えなくなっていく。もう威一郎の事は諦めます。瑤子に託す事にしました」
 とこぼした。
「おやまあ。子供にはやんちゃ盛りがあるのよ。貴方もお父様には随分裏で反抗して、今の地位を得たんでしょう?息子と父親ってべたべた仲良くないものなの。威一郎も大人になったら、ちゃんとなるわよ。貴方みたいに」
 倭文重のアドバイスは、身に滲みる。
「そうなのかな」
「そうよ。時代は変わっても、父子の関係は不変なの。女みたいにいかないのよ」
「有り難う。気が楽になりました」
「これから仕事?」
「いえ。今夜はもう寝ます。酔ってしまった」
「そうしなさい。お休み」
「お休みなさい」
 ポロシャツにジーパンというラフな格好のまま、公威はふらふらと母屋へ帰って行った。
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