涙の宝器~異空間前編
今のところ、体には何の変化もない。
言われた通りに降車口に立った。
霧は全く晴れない。
そしてバスが止まる。
ついに扉が開いた。
俺は息を呑んでゆっくりとバスを降りた。
……………。
運転手は言う。
「ここでお別れです。
肉体の持ち時間はおよそ五分ほどです。
それまでは私との会話が可能です。
それでは行ってらっしゃいませ」
扉がしまった。
バスが走り出すと、それに合わせるかのように、さっきまでの大量の霧が一斉に消えた……