しあわせ色の恋~想いよ、永遠に~


壮吾の声が、微かに震えていた。

静かな声。

私達のうしろから涼しく聞こえる虫の鳴き声のほうが、大きかった。


「これ」


そう言って、私の目の前に差し出されたのは、小さなスケジュール帳。


「最後に、あいつが俺んちに来た時に、忘れてった。やっぱり、元カレのことが忘れられないからって振られて。俺は未練たらたらで忘れられなくて、そのスケジュール帳だけ、バカみたいにずっと持ってた」


壮吾から受け取ったスケジュール帳は、少し色褪せていて、色んなところが折れ曲がっていた。


2004年のスケジュール帳。


壮吾に目を向けると、『中、見てみて』と、壮吾が切なくほほ笑んだ。




4月15日
カテキョのバイトスタート


4月20日 
今度の学生、結構バカ。こりゃ、大変。


5月15日 
今日でちょうど一カ月。私の教え方がいいのかな?壮吾くんの成績、少し上がった。やった!!


6月13日 
壮吾くん、見掛けによらず結構がんばり屋で、案外真面目。


7月5日  
夏休み前のテストで、またまた成績アップ。ご褒美に、何かあげようかな。



スケジュール帳には、びっしり、その日の出来事が綴られていた。


ほとんどが壮吾に関する事ばかり。



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