しあわせ色の恋~想いよ、永遠に~


「退院、するんですか?」


第一声を間違えたと思いながらも、病室に、一歩足を進めた。

力なく、頷くお母さん。


「あなた、1人なの?」


ドアの方へ目を向けている。

今度は、私が頷く。


「……そう」

「今日は、お母さんにお話があって、1人で来ました」

「話?」

「はい」


窓の外で風が吹き、一枚の葉がハラリと風に舞った。


物音ひとつしない、病室。

次の言葉が出てこない。

話があると言ったのは、私。

でも……何から話せばいい?

どんな言葉を使ったら、レオくんの気持ち、お母さんに伝わる?


国語力のない私。

言葉を選ぶのに、少し、時間がかかった。





「わたしは……ないわ」


――え?


「ごめんなさいね。退院の準備で忙しいから、帰ってもらえるかしら」


一度も目を合わせることなく、ベッド上の荷物を、ボストンバッグに力任せに詰め込む。


伝えたいことがあったのに。


「あぁ、あの子にも言っててくれる?」


言葉が、出てこない。


「もう、訪ねてこないでって」

「………」


頭の中が、真っ白になった。


ただ――…


違う。

これは、本音じゃない――。って、心が叫んだ。




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