シャーペンと君とあたし
そこに誰がいるかなんて分かっていたのに。
今は、顔も見たくない奴だったのに。
「よろしく」
「…………」
神田俊は、あたしなんかに興味ないとでも言いたげに淡々と言葉を並べただけ。
眉毛一本動かないほどの、真顔で。
あぁ、もう!だからムカつくの!愛想わるすぎっ!!!
これからずっと隣の席な訳だし、少しくらいなかよくしてやろーとかそんな気持ちはないわけ?!
愛想が悪い件について、あたしが何も言えないことくらい、百も承知だけれども!!
唇がとんがっていくのがわかる。ほっぺたが風船みたいにぶくぶくと膨らんでいくのがわかる。
自覚できるほど、あたしの苛立ちはマックス最上級だった。
「鈴乃〜。わりぃな、シャーペン貸してくんねぇか?」
─…その声が、届くまでは。