モザイク
みんなの声
地球は誰のもの?
声が聞こえた。
地球はみんなのもの。
誰かが答えた。
そうだよね。そうだよね。そうだよね。
他のみんなも賛成した。

なのに今の地球はどうなのだろう?
そう問題提起したものがいた。それは太平洋を泳ぐ鯨だ。大きな潮を噴きながら、みんなに聞いた。
人間の行動っておかしいよ。まるで地球は自分たちのものと言わんばかりに振る舞っている。
答えたのは大きな杉の木だ。憤慨しているのか、激しく花粉をまき散らしている。
人間の作るものも嫌いだ。うるさいし、側にいると気分が悪くなる。
カモメの群は言った。涙こそ浮かべていないが、声は哀しみに震えている。この間、飛行機のエンジンに飛び込んで死んだ仲間を偲んでの事だろう。

ただ、そう思っていないものもわずかながらいた。人に飼われ、さらにその人から慈愛を受けた犬や猫などのペットたちだ。
でも、いい人間もいるよ。
そう訴えた。しかし、大勢を占めているのは人間を憎む声だった。
人間を除く、多くの動物、植物たちの声は集まり力を成していった。
“人間から力を奪え。”、“人間を見たくない。”・・・形を成した力は、その勢いを加速させた。
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