ダウト-doubt-
涙は出なかった。
自分が今、哀しいのかも、よく分からない。
覚悟は、もうだいぶ前から、決めていたはずなのに、いざ失ってしまうと、この決断が間違いだったように思える。
無意識のうちに、ケータイを、手に取っていた。
電話しようとしていたのかもしれない。
さっきの、言葉を取り消すために。
思わず、自嘲の笑みがこぼれた。
一体、あたしは何がしたいんだろう…。
『サヨナラ』も、あの人の気を、引きたかっただけなのかもしれない。
どんな形でもいい。
本当は、まだ繋がっていたかった。
あたしは、自ら手放した物の大きさを、今さらながら、痛感していた。