最後の天使
「今日が、初めての入社日なんです」
「そうなんだ、名前は?」
「笹乃丸 隆二です」
俺がそういうと
彼女は吹き出し笑った。
俺の名字を笑わない人は
少ないだろう。
この名字は
変わっており、名前もすぐ覚えてもらえた。
「わかった、笹乃丸くんね」
彼女は一呼吸置いて、
落ち着いたように
俺の名を繰り返した。
「あなたな?」
「あ、私?私は、中谷 美紀」
彼女はそう笑うと
日差しのほうに立ち上がって
背伸びをした。
その姿は
花のようだった。
「あのっ!アドレス、教えてもらえませんか?今日のお礼もしたいので」
「ん?いいよ」
そういうと二人は
携帯を向かいわせ、
数秒するとそれをポケットに直した。
「じゃあ、がんばってね笹乃丸くん」
「ありがとう」
彼女の去っていく後ろからは
いい香りがする。
「これはきっと、シオンのにおいね」
俺と同じように
彼女の香りを感じたおばさんが
ポツリとつぶやく声が聞こえた。