貴公子と偽りの恋
香山君に好きになってもらえなくても、諦める覚悟はしている。

でも、嫌な女だったとは思われたくない。だから、香山君の気に障るような事を私がしたのなら、二度と同じ過ちはしたくなかった。

「ねえ、直したいから、言って?」

「じゃあ、言うよ。遼に、あんまり近付くな」

ああ、あの事か…

私が無理に水嶋君に話し掛け、私のコンタクトの事で水嶋君の顔が接近したっけ。

でも、どうしてそれで香山君が怒るの? なんで?

「分かりました。水嶋君には近付かないようにします。でも、どうして?」

「分からない?」

香山君が、私の目を真っ直ぐに見ている。まるで私の心を探るような目で。
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