貴公子と偽りの恋
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香山裕樹様

突然のお便りすみません。
お話したいので、お昼休みに裏庭へ来ていただけますか?

3年1組 篠原優子
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たったこれだけを書くのに、緊張したりドキドキしたりで、何度も失敗しちゃった。

書き終えた便箋を丁寧に四つ折し、同じくピンクの封筒に入れた。

そして封筒の表に、『香山裕樹様』と慎重に書いた。

『出来た…』

会ってくれるかな…

私は目をつぶり、柔らかく微笑む香山君を想いながら、封筒にそっと唇を寄せた。
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