貴公子と偽りの恋
「美味いか?」

歩きながら私があんず飴を舐めていたら、紳一が呆れたような言い方をした。

「うん、美味しいよ」

「優子はまだガキだな」

「な、何でよ? 大人だって子供だって、好きなものは好きでしょ?」

「そういう事じゃなくて、いつまでも変わらねえって事だよ」

「悪い?」

「どうかなあ。変わらなくていい部分もあれば、変わった方がいい部分もあるんじゃねえかな」

「どういう事よ?」

私には、紳一が何を言おうとしているのか、分からなかった。

紳一がすごく大人びて見える。二歳も下なのに…

紳一はふたつ下の弟。私と同じ学校に通う高校一年生だ。
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