雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
窓の外を見るといつの間にかジンの車が停まっていた。

兄やジンは大学でバンドを組んでいて、時々こうして防音室のある遼の部屋を借りに来る。

私はリビングを出てもう一枚ドアを開け、地下へと続く階段を下った。

いくつか部屋を過ぎ、一番奥のブースへ向かう。


そっ…と気づかれないようにドアを開けると同時に、聴き覚えのあるメロディと綺麗な歌声が流れてきた。

その曲は『真珠の雨』というタイトルで私のお気に入りだった。

いつもはヴォーカルの兄が歌うのに、今日は別の二人が歌っている。

ギター担当のはずのジンと……初めて見る女の子。

ややハスキーなジンの声と透明な伸びのある女の子の声がすごく合っていて、その切なくも美しいハーモニーに聴き惚れてしまう。

曲が終わり、私は思わず拍手をしていた。


「──紗矢花、なんでここにいるんだよ? あいつは?」


椅子から立ち上がった兄が、鬱陶しげにこちらを振り返った。


「遼ならさっき出かけたよ。私は留守番」

「あっそ」

「ジン、久しぶりだね」

「……ああ、そうだな」


ジンは鋭い眼をほんのわずかに細め言葉を返す。
< 63 / 126 >

この作品をシェア

pagetop