先生は何も知らない
「放課後、また数学の勉強付き合ってあげますから。期末は負けたくないんでしょ?」

 斎藤は大きく頷いた。素直だ、と川嶋は思う。

「はは。もう終わった男なのに、何であたしこんなにムキになってるのかな。馬鹿みたい。……」

 川嶋は何と言って良いか分からなかった。だから、川嶋は精一杯に考える。

「そのカノジョが、性格が悪いのがいけないんですよ。外見に恵まれていても、中身が伴わないと駄目ですね」

 斎藤は笑った。

「中身はあたしの方が恵まれてるかな」

 川嶋は頷いた。そして、斎藤はまた笑う。

「先生、ありがと。元気出た」

 授業開始の鐘が、二人の間に響いた。











先生、人間は何故足掻く*完
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