雪の雫に濡れた夜

街のざわめき

 
 *

「あれ?…どうした、シュイ。随分早い出勤だな」


裏口から現れた私を見つけ、慎が声をかけてきた。


「うん、たまには開店前の準備も手伝おうと思って、」

いつもと違う、ラフなラベンダー色のニットにジーンズ姿の私は、長い髪を結い上げた。


「そりゃ助かるけど、いいのか?夜も忙しいぞ」

「いーの、斗哉は仕事でいないし、一人で部屋にいてもつまらないから」

「理由がそれかよ、」
 呆れた様に、慎が呟く。


 一人であの部屋にいると、

 色々考えてしまいそうで…


 こわい



< 20 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop