飛べない鳥


『は?』

飛鳥は僕を睨む。

ノーメイクなのにパッチリとした目で見られると困る。



『光太は関係ないじゃん』


『関係あるよ』



僕はじっと彼女を見た。




『飛鳥、別れよう』


僕たちは付き合っているわけじゃない

だけど飛鳥にはこの言葉が最適だと知っていた。


飛鳥を突き放すには…。



『やだ…』


飛鳥は声を上げる。


『やだやだやだやだ!!!』


『飛鳥は僕に甘えてるんだよ』


『甘えてなんかない!!』


甘えてるよ。


だから君はまともな恋愛が出来ないんじゃないか。



僕という逃げ道があると思い安心してしまっている。



『飛鳥、飛鳥は飛べる鳥だよ』

『え?』

飛鳥は顔を上げる。


『悪い意味じゃなくって良い意味の“飛べる”。

親鳥に愛情をもらえなかった分

成長は遅れたけど今は大きく成長したじゃん』


だけど僕がその成長の妨げになるなら…。


僕のせいで君が“飛べない”なら…。



『飛鳥、ちゃんとした恋愛を楽しみな』


僕は立ち上がる。



飛鳥は『あ』と声を漏すが何も言わずにいた。




< 28 / 34 >

この作品をシェア

pagetop