飛べない鳥
『は?』
飛鳥は僕を睨む。
ノーメイクなのにパッチリとした目で見られると困る。
『光太は関係ないじゃん』
『関係あるよ』
僕はじっと彼女を見た。
『飛鳥、別れよう』
僕たちは付き合っているわけじゃない
だけど飛鳥にはこの言葉が最適だと知っていた。
飛鳥を突き放すには…。
『やだ…』
飛鳥は声を上げる。
『やだやだやだやだ!!!』
『飛鳥は僕に甘えてるんだよ』
『甘えてなんかない!!』
甘えてるよ。
だから君はまともな恋愛が出来ないんじゃないか。
僕という逃げ道があると思い安心してしまっている。
『飛鳥、飛鳥は飛べる鳥だよ』
『え?』
飛鳥は顔を上げる。
『悪い意味じゃなくって良い意味の“飛べる”。
親鳥に愛情をもらえなかった分
成長は遅れたけど今は大きく成長したじゃん』
だけど僕がその成長の妨げになるなら…。
僕のせいで君が“飛べない”なら…。
『飛鳥、ちゃんとした恋愛を楽しみな』
僕は立ち上がる。
飛鳥は『あ』と声を漏すが何も言わずにいた。