流華の楔
所変わり、土方と和早は二人きりで相対していた。
無論、和やかな雰囲気というわけではない。
土方独断の入隊試験である。
剣には絶対の自信があった。
幼い頃から鍛え込まれてきたし、鍛練を怠った日はない。
生きるために、強くある必要があったからだ。
初対面で、しかもこれからの待遇に差し障る可能性があるとしても。
手加減はしないし、負ける気もない──。
「真剣でも良かったのですが」
木刀を振って、感触を確かめながら言う。
割と初期の頃から真剣を握らされてきた和早にとって、勝負事は常にそれを使用してきた。
臨時の入隊試験といえど、使い慣れない木刀で戦うのは気が些か引けた。
「馬鹿言うな。死ぬ気か」
冗談半分、本気半分の和早の言葉を土方は即否定した。
まあ、それが普通だろう。
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