流華の楔



「失礼します」



すっ、と襖が開き息を切らした和早が姿を現す。
斎藤は正装した和早を「何故」という目で見た。




「和早ちゃん?」


「………」



和早は、早馬で会津公の元へ行っていたのだ。
唯一事情を知る土方は、何も言わずに和早の報告を待った。







和早が土方の隣に膝をつく。



「会津は当分動きません。主に臣下が各準備に手間取っているようです」



「そうか」





音沙汰もない。
会津藩も動かない。



ならば、勝手に動くまで。



「和早、斎藤、支度しろ。他の隊士もあつめておけ」


「はい!」









世間に新選組を認めさせる為に、この期を利用する。


一生「壬生狼」と罵られ続けるのは御免だ。



近藤は…新選組は、必ずのし上がらなければならないのだから。



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