流華の楔




古高俊太郎



最初にこの男に目をつけたのは近藤であった。


商人にも関わらず、たいした商いもせず近所付き合いもないので「これは怪しい」と思ったらしい。

しばらく様子を見、頃合いを見計らって引っ立てた。






古高が何かを隠しているのは間違いなかった。


しかし古高もしぶといもので、逆さに釣り下げて五寸釘を足のうらに打って溶かした蝋燭を云々……と、したところでようやく自白。



その内容というのが、

“六月二十日、長州の志士が御所を焼き打ち、その混乱に乗じて松平公と島津公を暗殺、天皇を連れ去る”というもの。



それをうけて、すぐさま会津藩に報告したはずだったのだが。






「音沙汰無しだと…?」



この状況下で、会津は何を考えているのだ。
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